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ランエボ10 ファイナルエディションは、最高出力313PSを発生する4B11ターボを搭載し、国内1000台限定で販売されたランサーエボリューション最後の市販モデルです。
2015年4月10日に先行予約が始まり、車両本体価格は429万8400円。当初は認証前だったため最高出力が未公表でしたが、発売時の正式スペックでは230kW、つまり313PSと公表されました。
1992年に登場した初代ランサーエボリューションから約23年。WRC参戦を背景に進化してきた高性能4WDセダンの歴史を締めくくったのが、ランサーエボリューションXをベースとするファイナルエディションです。
この記事では、通常のエボXとの違い、313PSという数値の根拠、専用装備、中古価格、購入前に確認すべき劣化箇所まで、現役メカニックの視点を交えて詳しく解説します。
ランエボ10 ファイナルエディションとは?発売日・価格・限定台数を整理
ランエボ10 ファイナルエディションとは、ランサーエボリューションXの生産終了と、シリーズ約23年の歴史を記念して企画された最終特別仕様車です。
三菱自動車は2015年4月10日に国内1000台限定で先行予約を開始し、同年8月ごろの発売を予定していました。価格は消費税込みで429万8400円です。
重要なのは、単に専用エンブレムを追加した記念車ではないことです。
ベースとなったのは、ランサーエボリューションX GSRの5速MT車。TC-SSTと呼ばれる6速デュアルクラッチ式トランスミッションは設定されず、シリーズ最後のモデルは3ペダルの5速MTに一本化されました。
主な基本情報は次のとおりです。
- 発表・先行予約開始:2015年4月10日
- 発売時期:2015年8月ごろ
- 国内販売台数:1000台限定
- 新車価格:429万8400円
- ベース車:ランサーエボリューションX GSR
- トランスミッション:5速MT
- 型式:CBA-CZ4A
- 駆動方式:フルタイム4WD
- エンジン:4B11型2.0L直列4気筒MIVECターボ
さらに、フロアコンソールには001から1000までのシリアルナンバーを示す専用プレートが装着されました。
このプレートは単なる装飾ではありません。限定車としての個体識別性を高め、現在の中古車市場でも純正性を確認する重要なポイントになっています。
なお、「ファイナルエディションのエンジンは匠が一基ずつ手組みした」と紹介される場合がありますが、国内仕様について三菱自動車の公式情報で明確に確認できない内容は断定すべきではありません。
限定車の魅力を伝えるうえでも、確認できた事実と伝聞を分けることが大切ですよね。
313PSはメーカー公式?数値が曖昧に見える理由とは
結論から言えば、ランエボ10 ファイナルエディションの最高出力230kW、313PSは三菱自動車が示している正式な数値です。
三菱自動車の車種史にも、エンジン改良によって最高出力と最大トルクを高め、歴代最高となる313PSを実現したことが記載されています。
正式なエンジンスペックは次のとおりです。
項目 ファイナルエディション 従来のエボX GSR・5MT
エンジン 4B11 MIVECターボ 4B11 MIVECターボ
排気量 1,998cc 1,998cc
最高出力 230kW・313PS/6,500rpm 221kW・300PS/6,500rpm
最大トルク 429N・m・43.7kgf・m/3,500rpm 422N・m・43.0kgf・m/3,500rpm
変速機 5速MT 5速MT
駆動制御 S-AWC S-AWC
それでは、なぜ「313PSは本当に公式なのか」と疑問を持たれるのでしょうか。
理由は、2015年4月10日の先行予約開始時点では型式認証を取得しておらず、正式な最高出力がまだ発表されていなかったためです。
当初の発表では「最高出力を向上」「中高速域で伸びのある出力特性」と説明され、具体的な数値は発売前に公表するとされていました。その後、認証を経て230kW・313PSという正式値が明らかになっています。
つまり、資料によって数字が違うのではなく、発表時期によって数値の記載状況が違ったと理解すると分かりやすいでしょう。
エンジンには、内部に金属ナトリウムを封入したエキゾーストバルブが採用されました。
ナトリウム封入バルブは、バルブ内部のナトリウムが溶けて移動することで、燃焼室側に集中する熱をステム側へ逃がしやすくする部品です。排気バルブの温度を管理し、高負荷時の信頼性を確保する狙いがあります。
13PSという向上幅だけを見ると、小さく感じるかもしれません。
しかし、ターボ車で出力を高める際は、燃焼温度、排気温度、ノッキング、タービン回転数、クラッチや駆動系の耐久性まで同時に成立させなければなりません。
私が技術的に評価したいのは、単純に過給圧を上げて派手な数字を作るのではなく、市販車としての耐久マージンを残しながら歴代最高出力を実現した点です。
通常のエボXとの違いは?専用装備と走行性能を比較
ファイナルエディションと通常のランエボXとの違いは、エンジン出力だけではありません。
走る、曲がる、止まるという基本性能をまとめて高める装備が採用されています。
項目 ファイナルエディション 通常モデル
販売台数 国内1000台限定 通常販売
最高出力 313PS 5速MT車は300PS
最大トルク 43.7kgf・m 43.0kgf・m
変速機 5速MTのみ 5速MTまたはTC-SST
ショック ビルシュタイン製 グレード・仕様による
スプリング アイバッハ製 標準スプリング
フロントブレーキ ブレンボ製2ピース大径ディスク 仕様による
ホイール BBS製18インチ鍛造ホイールなど 仕様により異なる
室内 赤色ステッチ・専用プレート 通常仕様
外装 Final Editionエンブレム・専用加飾 通常仕様
足回りにはビルシュタイン製単筒式ショックアブソーバーと、アイバッハ製スプリングを組み合わせたハイパフォーマンスパッケージ相当の装備が採用されました。
ブレーキには、ブレンボ製の2ピースタイプ大径フロントディスクを装備。ディスクを摩擦面とハット部分に分けた構造で、重量や熱変形への配慮がなされています。
外装では、ダーククロームメッキのフロントグリルモール、ブラック塗装のルーフ、専用エンブレムなどを採用しています。
室内にもレッドステッチ、ブラック基調のルーフライニング、専用シリアルナンバープレートが与えられ、運転席に座った瞬間から最終限定車であることを感じられる仕上がりです。
ただし、中古車を確認するときは「BBSホイールが付いているからファイナルエディション」と判断してはいけません。
ホイールやシート、エンブレムは交換できるため、車台番号、型式、シリアルプレート、登録情報、整備記録を総合的に確認する必要があります。
ランエボ10 ファイナルエディションの中古価格はなぜ高い?
ランエボ10 ファイナルエディションの中古価格が高い主因は、1000台限定、シリーズ最終型、5速MT、高性能4WDという希少条件が重なっているためです。
2026年8月2日に三菱自動車の公式中古車情報を確認したところ、走行距離1万km台のファイナルエディションで、車両本体価格約700万円から930万円の掲載例が確認できました。
一方、走行距離が多い車両、修復歴のある車両、改造範囲の大きい車両では、価格が大きく下がることがあります。
そのため、「ファイナルエディションの相場は一律で何万円」と表すのは適切ではありません。
価格差を生む主な条件は次のとおりです。
- 走行距離
- 修復歴や交換歴
- ワンオーナーかどうか
- 整備記録簿の有無
- シリアルプレートの状態
- 純正部品が残っているか
- ECUやタービンの変更歴
- サーキット走行歴
- 下回りの腐食
- ボディカラー
- 販売店保証の内容
特に注意したいのが、チューニング費用と中古車価値は必ずしも比例しない点です。
高価なタービン、車高調、マフラー、ECUが装着されていても、買い手から見れば「どのようなセッティングで、どれほど負荷をかけて走っていたのか分からない車」になります。
反対に、純正状態を保ち、定期交換部品や油脂類の記録が残っている個体は、車両の履歴を追いやすいため評価されやすくなります。
価格の高さだけで「将来必ず値上がりする」と考えるのは危険です。
中古車相場は景気、海外需要、為替、法規制、部品供給、車両状態によって動くため、投資商品ではなく、維持費を負担しながら楽しむ自動車として判断しましょう。
中古車購入時に確認したい故障・劣化ポイントは?
ランエボ10 ファイナルエディションを購入するときは、外装の美しさよりも、高負荷で使われる機関系と駆動系の履歴を優先して確認してください。
現場で高性能ターボ車を見る際、私はエンジン単体だけでなく、冷却系、油脂類、クラッチ、ブレーキ、足回りを一つのシステムとして確認します。
どこか一か所に強い負荷がかかっていた車は、周辺部品にも痕跡が残るからです。
4B11ターボエンジンと冷却系
冷間始動時と暖機後の両方で、異音、白煙、オイル漏れ、冷却水漏れを確認します。
社外ECUやブーストアップ歴がある場合は、現在ノーマルに戻されていても、過去の高負荷運転まで消えるわけではありません。プラグの状態、圧縮、オイル管理記録も判断材料になります。
クラッチと5速MT
高出力4WD車では、発進時や全開加速時にクラッチへ大きな負荷がかかります。
高いギアで低回転からアクセルを踏み込み、エンジン回転だけが先に上がる場合は、クラッチが滑っている可能性があります。ただし危険な試乗は避け、販売店や整備工場に点検を依頼しましょう。
シフト操作時の引っ掛かりや異音も確認しますが、冷間時だけ硬いのか、暖機後も症状が続くのかを分けて見ることが重要です。
S-AWCと駆動系
S-AWCは、AYC、ACD、ASC、ABSなどを統合して車両運動を制御するシステムです。
警告灯が点灯していないことだけでなく、診断機を使って過去の故障コードやセンサー値を確認できると安心です。デフやトランスファー周辺のオイル漏れ、異音、油脂交換履歴も見逃せません。
ブレンボブレーキと足回り
ブレンボのキャリパーは目立つため、外から見ただけで状態が良いと思われがちです。
しかし、確認すべきなのはディスクの段付き摩耗、熱による変色やクラック、パッド残量、ダストブーツ、左右の引きずりです。
ビルシュタイン製ショックも消耗品であり、走行距離が少なくても年数によってシールやゴム部品は劣化します。
試乗時に収まりの悪い揺れ、段差での異音、直進時のふらつきがある場合は、ショックだけでなくブッシュ、アーム、アライメントまで確認してみましょう。

下回りと修復歴
雪国や海沿いで使われた車両では、融雪剤や塩分による腐食も確認が必要です。
アンダーカバーで隠れる部分、サブフレーム、ブレーキ配管、ボルト、溶接部まで見ると、外装だけでは分からない使用環境が見えてきます。
私の経験上、洗車されて艶のある車でも、リフトに上げるとブッシュの亀裂、オイルのにじみ、ボルトの腐食が見つかることは珍しくありません。
購入前点検に費用をかけることは、車両価格が高いモデルほど有効な保険になります。
WRX STIと比べてランエボ10はどんな人に向いている?
同時代の代表的な国産スポーツ4WDとして比較されるのが、スバルWRX STIです。
両車とも2.0Lターボ、MT、4WDという共通点がありますが、運転感覚を作る技術思想は異なります。
WRX STIは、水平対向エンジンとシンメトリカルAWDを軸に、機械的な安定感や前後バランスを重視しています。
一方のランエボ10は、S-AWCによって駆動力、制動力、ヨーモーメントを統合制御し、ドライバーの操作に合わせて積極的に車両姿勢を作る性格が特徴です。三菱自動車も、ランエボXをS-AWCの一つの完成形として位置付けています。
機械との対話や水平対向エンジンの感触を楽しみたい人にはWRX STIが候補になり、電子制御を活用した旋回性やS-AWCの動きを味わいたい人にはランエボ10が魅力的でしょう。
ただし、一般道で限界性能を試す必要はありません。
高度な4WD制御は物理法則を消す装置ではなく、タイヤのグリップをより効率的に使う技術です。安全な速度と適切なタイヤ管理が前提になります。
現役メカニックはファイナルエディションをどう評価する?
筆者としては、ランエボ10 ファイナルエディションの本質は313PSという数字ではなく、エンジン、駆動制御、ブレーキ、サスペンションを一台の完成品としてまとめた総合性能にあると考えています。
最高出力を13PS高めただけなら、社外ECUでも似た数字を出せるかもしれません。
しかし、自動車メーカーは真夏の渋滞、冬の始動、長距離走行、排出ガス、騒音、部品の個体差、保証期間中の耐久性まで考慮しなければなりません。
ナトリウム封入排気バルブを採用し、正式な認証を受けた状態で313PSを成立させたことに、メーカー純正チューニングの価値があります。
また、ファイナルエディションは「最後だから豪華に飾った車」ではありません。
通常モデルで用意されていた高性能装備をまとめ、エンジン出力を熟成し、シリアルプレートによって一台ごとの存在を明確にした、シリーズ終幕の完成形です。
一方で、誕生から10年以上が経過した現在は、限定車であることより個体状態のほうが重要です。
低走行でも長期間動かしていなければ、シール、ホース、ブッシュ、油脂類は劣化します。反対に走行距離が多少多くても、適切に整備され、定期的に動かされてきた車のほうが良好な場合もあります。
私見では、購入判断の優先順位は「限定番号」「走行距離」「外装の艶」ではありません。
修復歴、整備履歴、改造履歴、下回り、機関系の状態を確認したうえで、最後に価格が妥当かを判断するのが、安全で後悔の少ない選び方です。
まとめ
ランエボ10 ファイナルエディションは、2015年に国内1000台限定、429万8400円で販売されたランサーエボリューション最後の特別仕様車です。
最高出力はメーカー公式の230kW・313PSで、通常の5速MT車から13PS向上しました。予約開始時に認証前で数値が公表されなかったことが、「313PSの根拠が曖昧」と見える理由です。
ナトリウム封入排気バルブを採用した4B11ターボ、S-AWC、ビルシュタイン製ショック、アイバッハ製スプリング、ブレンボ製ブレーキなど、走行性能を総合的に高める装備も魅力です。
中古車価格は車両状態によって大きく異なります。限定車という肩書きだけに惑わされず、整備記録、改造歴、クラッチ、S-AWC、冷却系、ブレーキ、下回りまで確認することが大切です。
ランエボ10 ファイナルエディションは、数字や希少性だけではなく、三菱が長年磨いてきた高性能4WD技術を市販車としてまとめ上げた点にこそ、本当の価値がある一台と言えるでしょう。
よくある質問
ランエボ10 ファイナルエディションは何台限定ですか?
日本国内では1000台限定です。フロアコンソールには、限定車であることを示すシリアルナンバープレートが装着されています。
313PSは三菱自動車の公式スペックですか?
はい。最高出力は230kW・313PS/6,500rpm、最大トルクは429N・m・43.7kgf・m/3,500rpmです。
先行予約開始時点では認証前のため数値が公表されていませんでしたが、その後の正式仕様で313PSが示されました。
ファイナルエディションにTC-SST車はありますか?
国内仕様のファイナルエディションは、GSRの5速MT車がベースです。TC-SST仕様は設定されていません。
中古車は走行距離が少ない個体ほど安心ですか?
必ずしも走行距離だけでは判断できません。
長期保管によるゴム部品やシール類の劣化もあるため、整備記録、保管環境、油脂交換、下回り、改造履歴を含めて確認してください。
アイキャッチ画像出典:http://www.mitsubishi-motors.co.jp/evo/special/final_2015/gallery/index.html
執筆者:THUNDERBIRD(さんだーばーど)
現役メカニックエンジニア兼専属ライター















